五感の中の触覚

マーケティングの世界で、消費者の感覚に訴求する『五感マーケティング』の有効性が認識されています。いうまでもなく、味覚・嗅覚・触覚・視覚・聴覚の五感です。
古くからの事例でいうと自動車のドアの開閉音などが有名ですが、ドアを閉めるときの音の響き(聴覚作用)が自動車そのものの品質認知に影響を与えるというものです。他にも、パッケージのデザインで商品価値を高める、洗剤などのように「香り」の差別化によって商品選択を促すなど感覚訴求の重要性は以前から認識されていました。
しかしその中でも「触覚」が商品選択に及ぼす影響についてはあまり研究が進んでいませんでした。それは触覚技術が視覚や聴覚に比べると、多くの場合に潜在的・無意識的に働くため研究が難しかったことによります。
触覚の最も重要な特徴は「自分の事として体験する」点にあります。触覚は、あくまでも「自分の身に起きていることとして」感知します。この「自分事として体験」という点から、今の情報化社会において、触覚に特に注目することの意義もあるといえます。通信情報技術の進歩によって、文字や映像から間接的に理解することに馴れた分、体感としての理解が鈍化してしまってきた感があるためです。

料理を手づかみで食べるというレストランが日本でも展開され人気を得ています。テーブルに直接置かれたシーフード料理やサラダを顧客が直接手で食べる点に人気が集まっているようです。飲食店のCSに味覚や嗅覚・視覚が影響することはもちろんですが、実はこのような触覚の影響も無視できません。手づかみで食べることによる触覚からの情報によって、料理の温度・柔らかさ・質感などをより実体験として鮮明に感じとることが可能となり、それがその飲食店における顧客の経験価値を高めています。更には手づかみという非日常的な実体験が人気の一因になっています。
他にも枕や布団などの寝具の販売では、実際に来店した顧客に商品に触れてもらう(体験してもらう)という店舗も増えています。また、トイレットペーパーの販売では商品サンプルをパッケージから出して顧客に直接商品に触れてもらうことで販売量を伸ばした事例もあります。印刷業界でいえば、エンボスやデボスによる凸凹感、フロッキー印刷によるふわふわ・モコモコ感、UV厚盛り印刷・バーコ印刷による表面の盛り上がり等が、パッケージの手触りの良さや質感を生みだします。

このように、触感をマーケティングに取り入れることで、消費者の購買スイッチを押す効果が高まるということが言えるのではないでしょうか。触感の効果についてはもっと探求してみると面白いですね。

コムフィット合同会社 大澄秀明