今私たちに求められているのは、私たちの子供やその先の世代にわたり住み続けられる環境を地球上に残すことです。SDGs(持続可能な開発目標)がなぜ叫ばれているのか、その考え方のベースとなっているものは、当社はどういった形で貢献できるのか、それらの点について簡単にまとめてみました。
昨今話題になっているSDGs、大企業・都市部を中心に企業や行政が取り組み始めている様子が伺えます。一方で、SDGsはCSR活動の一環みたいなものではないか・コストアップにつながり業績に寄与しない活動だ・経済発展と環境は両立できないだろう、といった声が聞かれるのも事実です。
その答えを出す前に、ここではSDGsの考えを改めて整理し、弊社が取り組んでいるユニバーサルデザインとの関係性についてご紹介させていただこうと思います。
さらに、弊社がご提案できるSDGsへの取り組み支援についてもご紹介をさせていただきます。
●今更聞けないSDGs 〜SDGs「持続可能な開発目標」とは〜
私たちが暮らす地球上は今、数多くの課題に直面しています。そしてこのままでは、私たちがこれからも豊かに平和に暮らし続けていくことができなくなるという危機感が高まっています。
石油をはじめとする地球の資源は限りがあり、このまま使い続けていけばいずれ枯渇します。また、気候変動が急激に深刻化し、貧富の格差は広がり、地域紛争に伴い難民・避難民の数が増えています。
このままでは、人間が住める形で地球を先の世代につないでいくことができない。そうした強い危機感のもと、2015年に国連で採択され未来への道しるべとして定められたものが「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」です。
Sustainable Development Goalsは略して「SDGs(エスディージーズ)」と呼ばれています。
「持続可能な開発」とは聞き慣れない言葉ですが、今の暮らしの質を落とすことなく、将来もよりよく暮らし続けることができる開発のことです。貧困や飢餓・環境破壊・気候変動・ジェンダーや人権といった多種多様な課題の解決に取り組みつつ、将来にわたって持続的な経済成長を目指すため、2030年までに達成するべき17の目標とそれに次ぐ169のターゲット、達成の度合いをはかるための232の指標が設定されています。
■SDGsが掲げている17の目標
目標1.貧困をなくそう
目標2.飢餓をゼロに
目標3.すべての人に健康と福祉を
目標4.質の高い教育をみんなに
目標5.ジェンダー平等を実現しよう
目標6.安全な水とトイレを世界中に
目標7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
目標8.働きがいも経済成長も
目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10.人や国の不平等をなくそう
目標11.住み続けられるまちづくりを
目標12.つくる責任、つかう責任
目標13.気候変動に具体的な対策を
目標14.海の豊かさを守ろう
目標15.陸の豊かさも守ろう
目標16.平和と公正をすべての人に
目標17.パートナーシップで目標を達成しよう
■17の目標とターゲット・指標
SDGsは2030年までの解決を目指す17の目標から構成されています。地球温暖化や環境破壊に関する「環境面」の目標、開発途上国も先進国もともに経済成長を続けていくための課題を示した「経済面」の目標、平和や人権・ジェンダーの平等を目指す「社会面」の目標など、持続可能な社会を実現するための目標がさまざまな面から考えられているのが特徴です。
さらに、それぞれの目標には、目標を達成するための具体的な取り組みを示した169のターゲットと、ターゲット達成の目安となる数値目標を示した244の指標が示されています。「目標」「ターゲット」「指標」が階層になっているイメージです。
では、目標とターゲットの関係性はどうなっているでしょうか。「目標1.貧困をなくそう」のターゲットを見てみます。
1-1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1-2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。
1-3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱(ぜいじゃく)層に対し十分な保護を達成する。
1-4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1-5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靭性(きょうじんせい:レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1-6 あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1-7 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
「目標1.貧困をなくそう」のターゲットは合計7つのターゲットで構成されています。
ターゲットの「1-1」では、「2030年までに極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」ことが掲げられていますが、その指標には「1-1-1 国際的な貧困ラインを下回って生活している人口の割合(性別、年齢、雇用形態、地理的ロケーション(都市/地方)別)」とあります。国際的な貧困ラインとは「1日の生活費が1ドル90セント未満」と定義されており、この指標は、「1日1ドル90セント未満で暮らしている人々の人数を、性別、年齢、雇用形態、都市と地方といった条件別に統計をとり、貧困をなくせているかどうかを視る」となります。
さて、ここ数年で企業や行政を中心にSDGsに関する取り組みが急速に広まりつつあります。個人のレベルではSDGsという言葉そのものの浸透度は低いのかもしれませんが、省エネですとかフードロスをなくそう、エコバッグを使おう、マイクロプラスチックの問題が・・・などと置き換えればどうでしょうか。実はこれらのキーワードは、SDGsの目標にもつながるものです。私たち一人ひとりがさらにSDGsに関心を持って、目指す姿を理解し、身の回りから取り組み始めることが求められています。
●SDGsとユニバーサルデザインの共通性
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、障害の有無などに関わらず、誰もが使いやすいようにデザインされた製品やサービスなどのことを指します。現代社会では新たに市場に出回る多くの製品・サービスにユニバーサルデザインの視点が取り入れられており、私たち生活者はユニバーサルデザインという言葉そのものを意識せずとも、その恩恵を享受しているといえます。
一方で、持続可能な社会や開発を目指すSDGsでも、年齢や性別、障害、民族、国籍、宗教などによる差別や不平等をなくすことが目標に掲げられています。
お互いに共通しているワードは「不平等をなくすこと」です。ではなぜそれが大事なのでしょうか。「不平等をなくすこと」について、ユニバーサルデザインの考え方を今一度おさらいしてみます。
■ユニバーサルデザインとは 〜おさらい〜
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍、障害の有無などに関わらず、誰もが使いやすいようにデザインされた製品、サービス、インフラなどのことです。
力を入れなくても開けられる容器の蓋、左利きの方でも使えるハサミ、弱視の方でも利用しやすい音声案内など、ユニバーサルデザインの考え方と普及はすでに私たちのごく身近にあるといえます。
また、2016年に施行された障害者差別解消法により合理的配慮が求められ、行政機関においては合理的配慮が義務となったこともユニバーサルデザイン・ユニバーサルサービスの普及促進を後押ししています。
近年、ユニバーサルデザインは特定の施設や製品だけでなく、もっとマクロな視点で考えることが必要だと言われています。たとえばエスカレーターが設置してある施設に、車いすやベビーカーを引いている人向けにエレベーターを取り付けたとします。施設の利用者に利用しやすいほうを選んで使ってもらう場合でもそれぞれの設置場所が離れていては使い勝手が悪いですよね。この場合、施設全体をユニバーサルデザインでトータル設計するのが理想だとされています。もっと言いますと、個々の施設ごとではなく、「誰でも暮らしやすい」デザインに配慮された街づくりが今後の課題だともいえます。
ユニバーサルデザインのもう一つの注目点として「完成形がない」という考え方があります。ここまでやれば良し、というものではないのです。常に、「すべての人に受け入れられるデザインか」を見直し、取り残される人がいないようにより良くしていく取り組みが求められます。
昨年来の新型コロナウイルス感染症拡大により、マスクの着用が一般的になってきました。このマスク一つを取っても、「耳が痛い」「肌が荒れる」など様々な使い勝手の悪さが指摘され、多様な製品が開発されました。しかし、このマスクの着用により日々の暮らしが困難になった方々もいます。そうです、難聴者です。聴覚に障がいがある人は相手の口元を“読んで”会話を理解します。それが困難になってしまったのも事実です。
このように、ライススタイルの変化や社会環境の変化により、日々新たな課題も発生します。ユニバーサルデザインとは、社会の変化に応じ、常に「困っている人・取り残されている人」がいないかを検証し改善していくことが大切だといわれています。
■ユニバーサルデザインとバリアフリー
少し辛口になりますが、行政などによるユニバーサルデザインの啓発コメントを拝見していますと、ユニバーサルデザインを推進している立場の方々であってもユニバーサルデザインとバリアフリーを混同されているケースが多くみられます。ここでは今一度この2つの違いについてまとめてみたいと思います。
ユニバーサルデザインは、1980年代にアメリカのロナルド・メイス氏によって提唱されました。この時代はベトナム戦争の帰還兵などでアメリカ国内に障がい者が増加した時期でもあります。自身も体に障害があり、建築家でもあったメイス氏は、障がい者だからと言って特別扱いされることなく、あらゆる人が使いやすいデザインをするという視点を持ってほしいと、ユニバーサルデザインを提唱したと言われています。
さて、“特別扱い”というキーワードが非常に重要です。障がい者だけを対象(特別扱い)にした製品やサービスはあまり長続きしません。なぜなら量産できずにコストがかかるから、障がい者の方も特別扱いされたくないから、です。したがって、ロナルド・メイス氏が提唱したユニバーサルデザインとは障がいの有無に関係なく誰もが使いやすいデザインである必要があります。
では、ユニバーサルデザインをより詳しく知るために、バリアフリーとの違いなどについて紹介します。
■ユニバーサルデザインの7つの原則
ユニバーサルデザインには「7つの原則」があります。製品やサービスを開発するうえですべての原則を満たす必要はありませんが、誰もが使いやすいデザインにするために重要な要素になります。
1.誰でも公平に使えること
子どもからお年寄りまで、障がいがある人もない人も、言語の違いがあっても、誰もが同じように使えることが大切です。
2.自由度が高いこと
使う人のさまざまな能力やの個人差に合うように作られていて、多様な使用環境に対応できる自由度があることが大切です。
3.簡単でわかりやすいこと
使う人の経験や知識、言語能力などに関係なく、使い方がわかりやすく直感的に使えること。
4.必要な情報がすぐ理解できること
使用状況や、使う人の能力に関わらず、読みやすく伝わりやすさに配慮されていること。男子トイレ・女子トイレのピクトグラムなどはよい例ですね。
5.うっかりミスが危険につながりにくいこと
間違ったり、意図しない使い方があったりしても、危険につながらないようにデザインされていること。
6.体に負担が少なく楽に使えること
無理のない姿勢や少ない力で使えるなど、体に負担がかからないことを指しています。
7.使いやすい十分なスペースが確保されていること
使う人の体格や姿勢、歩行条件などに関係なく、移動しやすく操作しやすいスペースや大きさが確保されていること。
■バリアフリーとの違い
前述したとおり、バリアフリーとユニバーサルデザインは混同して使われやすい言葉です。
では、バリアフリーとユニバーサルデザインは、どのように違うのでしょうか。
バリアフリーとは、バリア(障がい)を取り除くという意味があります。障がいのある人を前提に考えて、その人にとってのバリア(障がい)を排除しようという考え方です。
一方、ユニバーサルデザインは、障がいのある人もない人も含めすべての人にとって利用しやすいものをはじめから作ろうとすることです。障害のある人はもちろんですが、お年寄りや子ども、赤ちゃんを連れている人、外国人にも、みんなが使いやすいものやサービスをはじめからデザインしようというのが、ユニバーサルデザインの考え方です。障がいのある人を区別せず、みんなが使える街やものを作ろうというのが、バリアフリーとの大きな違いです。
例えば、入り口を一段高くしてそこにおしゃれなステップをつけて店舗を設計・建築したとします。健常者には問題がなかったのですが,お年寄りや車いすの方から「入りづらい」・「転ぶのが心配」といった声が寄せられたためステップの一部を改修しスロープにしました。この対応がバリアフリーです。そうではなく、より多くのお客様が利用しやすい店舗デザインを設計段階から取り入れて店舗づくりをすることがユニバーサルデザインになります。
■なぜ、いまユニバーサルデザインが必要とされているのか
「自分は障がい者ではないから関係ない」という人は多いと思います。しかしこれは間違った考え方であって、私たちすべては「何らかの障がいを持っている」人と「これから何らかの障がいを持つ人」のいずれかしかないのです。長寿社会・高齢化社会が進むなか、40代50代の年齢になれば大部分の人は“老眼”という目の障がいを持ちます。さらに年齢が進めば、足腰が弱ったり体の自由が利きづらくなったりします。若い時のようには生活ができないのです。つまり、『障がい』は他人事ではないのです。
都市機能はさらに複雑になり、どこかに移動しようにも電車やバスの乗り継ぎもわからないといったことも起きるかもしれません。そして数年前から起こったインバウンドブームも。私たちは多様な訪日外国人や在留外国人と共生していく必要が出てきました。
このように、障がいは特別なことではなくなり、グローバル化が進む中ですべての人が安心して暮らせる社会づくりが今まで以上に求められてきています。だからこそ、ユニバーサルデザインの考え方が必要とされているのです。
●当社が貢献(提供)できるSDGsの取り組み支援
■UDフォントで不平等をなくそう
当社が創業時から提唱し続けているのがユニバーサルデザインフォント(UDフォント)の普及です。最近では企業のCSRレポートや取扱説明書、さらにはコーポレートフォントなど幅広い分野に使用されてきております。
UDフォントは、前述したユニバーサルデザインの考えに基づいた『情報伝達のユニバーサルデザイン』と言えます。
UDフォントとは、誤読を防ぐことを目的に開発された文字の書体(フォント)を指します。小さな文字でも、あるいはコピーやプリンタの精度により文字のつぶれやボヤケがおきた場合などでも多くの人が読みやすい文字です。
従来のフォントでは弱視の人、読み書きに障害がある人では『読みにくい』という問題がありました。それだけではなく、高齢化社会により多くの『老眼』や『白内障』の人たちからも文字(文章)や数字の読みにくさということが指摘されていました。
それらを解決するために開発された書体がUDフォントです。
《UDフォントの一例》
※数字の読み間違いを防ぐ(5と6、8と9など)
※文字が小さくても読みやすい。文字がつぶれてもよみやすい。
最も多い誤読のケースは数字の読み間違いです。例えば金融事業者(生保・損保・銀行など)が発行する文書で数字を読み間違えると重大なトラブルに発展するケースもあります。このように、行政や企業が発信する情報がより多くの生活者に正しく伝わることを目的に、UDフォントの認知や使用機会は増加しております。
《UDフォントの使用例》
(東京新聞様の記事より引用)
「誤読」は様々なケースで生活者に不平等・不利益をもたらすといわれています。企業や行政から重要な通知を送ったケースなどでも、「読みづらい」「重要だと気が付かなかった」「間違って解釈した」など、生活者に正しく伝わらない事例は多々あります。一例として行政が発信する「無料がん検診」の案内DM、「無料だとわからなかった」「いつどこでどうすればよいのか理解できなかった」として健診を受けなかった高齢者の方は常に一定数おります。これは生活者の不利益そのものです。逆に、案内DMのフォントを変更しわかりやすいデザインにしたことで受診率が向上した事例も多くあるのです。
このように、情報を発信する企業や行政が『すべての人々に公平に情報を伝える』ことを意識すれば、UDフォントの重要性は一層認識されていくだろうと思っています。
蛇足になりますが、日本は世界でも突出した高齢化社会です。国民の3割以上は「老眼」だといっても過言ではありません。かくいう私も老眼に悩まされています。そのことを痛切に感じるのは面会者と名刺交換をするときです。デザインに凝った名刺の多くが読めません。最近はスマホがあるのでカメラで撮影して拡大して読んでいる始末です。若い人にはわからないかもしれませんが、このように極めて身近なところで『情報が公平に伝わらない』という事象は起きています。
逆のケースも紹介します。葬儀に参列した経験がある方は多いと思いますが、最近は受付でB6サイズ程度のカードに記帳をするのが一般的です。あの記帳カードですが、住所氏名を記入する欄にとても広いスペースをとっていると思いませんか。そして文字も大きいです。老眼は読むだけではなくて書くことも億劫になります。狭いスペースに小さな文字を書かされるとそれだけで嫌になるのが高齢者ではないでしょうか。その点、広いスペースで大きく文字を書けるように配慮された記帳カードは常々「ユニバーサルデザインだな~」と感心してしまうのです。
多くの生活者に情報を発信する企業や行政が、名刺1枚からでも「多くの人にわかりやすく伝える」という意識を持って行動を起こせば、それは立派なSDGsの取り組みです。そのような場面でUDフォントはお役に立てることでしょう。
手前味噌ながら、当社が発信するレターのほとんどはUDフォントを使用し、さりげな〜くそのことをアピールしています。
《当社が普段使用しているレターヘッド》
■情報の電子化・多言語化で不平等をなくそう
皆さんは障害者差別解消法という法律をご存知でしょうか。
障害者差別解消法は正式な法律名を「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といい、2016年に施行された法律です。この法律は障がい者の不当な差別的取扱いを禁止するものです。「情報の電子化・多言語化」のお話の前に障害者差別解消法の概要について簡単にご紹介させていただきます。
障害者差別解消法は、社会におけるあらゆる障がいを理由とする差別(社会的障壁)の解消を推進するものです。行政や事業者が障がい者に対して障がいがあることを理由に不当な差別的対応をおこなわないことを求めており、これにより国民が障がいの有無によって分け隔てられることなく共生できる社会を目指すとしています。
障害者差別解消法は、具体的に”不当な差別的取扱いの禁止”、”合理的配慮の提供”、そしてそれらに関する”国による啓発、知識の普及を図るための取組”を推進することを目的としています。
■”不当な差別的取扱いの禁止”とは
”不当な差別的取扱い”とは、障がい者に対して障がいがあることを理由にサービス提供を拒否したり、本来のサービス提供の場所や時間に制限を課したり、健常者へのサービス提供時にはしない条件を付けたりすることです。たとえば、障がい者という理由で受付の対応を拒否する、本人がその場にいるのに本人を無視して介助者や支援者にのみ話しかける、学校などが受験や入学を拒否する、飲食店などの店舗で障がい者は保護者や介助者が同伴しないと入れないという条件を付ける、車いす等での入店拒否や視覚障がい者の盲導犬、身体障害者の介助犬同伴の入店拒否などが挙げられます。
また、学校・雇用・労働に関しても以下のような事例は”不当な差別的取扱い”となります。学校教育においては、本人や保護者が希望しないのに特別支援学校や特別支援学級に入ることを強いられる、授業や行事に参加できず別メニュー(見学を含む)になる、保護者の同伴を求められるなどです。雇用、労働の面では、障がいがあることを理由に採用面接・試験や雇用をしない、給与、昇進等に差をつけるなどが不当な差別的取扱いとして挙げられます。
■”合理的配慮の提供”とは
障害者差別解消法では障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜を図ることを求めています。例えば、講演会などで障がい者の障がい特性に応じて座席を決める、意思疎通のために図表や画像、タブレット端末などを使う、車いすの方に補助をするなどです。”過度な負担になりすぎない範囲で”とは、例えば従業員が少ない混雑した店において、車いすで入店した障がい者が介助を求めた場合、可能であれば介助をし、それができない場合は別の方法で対応すること、と捉えていただければよいかと思います。
”合理的配慮の提供”は、行政機関では対応をすることは義務であり、事業所は努力義務となっています。
合理的配慮は”過度な負担になりすぎない範囲で”という表現が入っていることで障がい特性やその時の場面や状況で対応が変わってきます。合理的配慮というのは必ずしも行政や事業者が障がい者の求めるとおりの配慮を行うことではなく、事業者の規模や従業員数、状況に合わせて柔軟な対応をすることと受け取ることができます。障がい者にとっては障がいを理由にサービスの利用を断られることは人権侵害、不条理でありますが、事業者にとっては事業の重荷になるような身の丈に合わない要望に沿うことはできません。そういう意味では、”合理的配慮”というのは双方に合理的である配慮とも言えます。
■情報の電子化・多言語化で不平等をなくそう
さて、以上で障害者差別解消法についてのご紹介は終わりとしますが、このことが情報の電子化・多言語化とどう結びつくのかをこれから紹介させていただきます。
世の中には様々な情報伝達物があふれています。自宅のポストに入る郵便物やDM、パンフレット・取扱説明書・広報物などすべては何らかの情報を伝えるための情報伝達物です。飲食店に入店した際に出されるメニューも情報伝達物といえますよね。特にここでは紙媒体による情報伝達物を取り上げますが、紙で配布される情報伝達物はすべての人々に平等に情報が伝わるとは決して言えません。具体例を挙げますと、視覚に障がいがある人(視覚障がい者や老眼の人)には情報がうまく伝わりません。ルビ(フリガナ)が振ってないと難しい感じが読めない人もいます。さらには、外国から日本に在住している人で日本語がわからない人には全く情報が伝わりません。そして何よりも、その紙の配布物が渡らなかった人には「情報を伝える」以前の問題となってしまいます。紙の情報伝達物というのはページ数の制約や配布枚数の制約などもあり、必ずしも満足のいく情報伝達手段とは言えないのです。
前項で、行政機関において合理的配慮は義務だというお話をしましたので、行政機関を例にとり情報の電子化・多言語化についてお話しします。
行政、特に地域に密着した市役所や町役場からは数多くの情報が発信されています。私たちが生活するうえで日常生活に欠かせないごみ収集日の情報から、ハザードマップのような生命にかかわる重要な情報まで幅広く大量の情報が発信されています。これらの情報を集約したものといってもいいのが「広報」ではないかと思います。多くは月に一度、市民・町民の自宅に1部ずつ配布されています。
しかしこの広報誌、改めて考えてみると合理的配慮がされているといえますでしょうか。障がい者・高齢者・在留外国人にきちんと伝えるべき情報が伝わっているでしょうか。さらに言うと、仕事や家庭の事情で一時的に市外で暮らさざるを得ない人々に情報が伝わるでしょうか。
残念ながら紙での広報という手段ではこれらの人々に重要な情報を伝えることはできません。情報伝達の不平等が生まれます。この問題を解消するのが『紙媒体+電子化・多言語化』です。広報を紙で配布するのと同時に電子ブックにしてWeb上で公開することを多くの行政機関で取り入れています。そして電子ブック化した広報をさらに多言語化するという取り組みも広がってきています。
電子ブックは拡大縮小が自由です。視力が弱い人はページを拡大して読むことができます。さらには記述されている情報を自動音声で読み上げてくれることもできますので視覚障がい者でも音声で情報を理解することができます。自動翻訳機能があれば日本語だけでなく各国の言語で読むことも可能です。そして何より、全世界の人々に広報を伝えることができます。
当社では㈱モリサワのカタログポケット(カタポケ)というアプリを使った多言語電子ブック制作を行っております。これは印刷物の制作データを基に、アプリが10ヶ国の言語に自動翻訳してくれ、さらに音声合成までしてくれる優れものです。スマホからだれでも閲覧することができます。すでに全国の200近くの自治体で採用されており、このカタポケという無料アプリからこれらの自治体の広報誌を読むことができます。
<広報誌電子版の例(日本語での表示)「広報かけがわ」から引用>
<広報誌電子版の例(PCやスマホの言語設定が英語の場合の表示)「広報かけがわ」から引用>
上のサンプルをご覧いただければお分かりの通り、広報誌自体は日本語で制作されていますが、電子ブックにする際に10カ国の言語情報を設定します。これにより、広報誌の電子ブックをPCやスマホで見る場合、これらの機器の言語設定に応じて電子ブックの表示もその言語に合わせて表示される仕組みになっています。普段ベトナム語でスマホを操作している人が見ればベトナム語で表示されるというわけです。この事は、わざわざベトナム語で広報誌を制作する必要もないため、行政側にとってもコストを抑えて他言語で情報を知らせることが可能になります。
行政機関にとっては『合理的配慮』が義務になっています。視覚障害だから、あるいは日本語がわからないからという理由で重要な情報を伝えないことはあってはなりません。障がいの有無に関わらず情報を伝える手段として、カタポケを通じた情報の発信は広がりを見せています。
そしてカタポケによる多言語電子ブック化は行政の広報だけにとどまらず、民間事業者が発信する情報物でも取り入れられつつあります。
大事な情報を一人でも多くの人にわかりやすく伝える手段、それがカタログポケットといえます。カタポケは今まで紙で伝えていた情報にプラスして電子化することで、紙以上の情報量を付加してより多くの人々に情報を伝えることができます。差別や不公平・不平等をなくす情報伝達手段としての『多言語電子化』、今後されに採用される行政・事業者は増えていかれることと思っています。
カタログポケット:https://www.catapoke.com/
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